「お父さんのひとりごと」を出版してから、だいぶたった。今、読み返すと、何か、違う齋正弘がそこにいて、訳知り顔にご託を並べているように思える。あの本を出して以降、何があったかを書き始めようとして、ま、いいかな、と思う。なんかいろいろなことがあった。あたりまえだ。何年たったのだろう。いろいろなことがあったので、もちろん、僕は少し変わった。少し、大人になったと書こうとして、うふふ、恥ずかしい、と思えるようになった、というのが正しい感じだ。「お父さんのひとりごと2」を書き始めようと思う。今度は、このような形で考えをまとめていく。
とはいえ、今、僕はどこにいるかは明らかにしておいた方がいい。この文は、宮城県岩沼市の自宅で書いている。2005年の4月から、実家のあったところに新たに家を建てて、長年住んだ県の官舎から移った。子供たちは、いよいよ、まったくいない。かわりにかみさんと、僕の父と一緒に暮らしている。82歳の人と暮らすと、暮らすことで起こる様々な事柄の方向が変わる。考えが向かう方向は、無限ではなく有限だったのだという感じが、明らかになる。前より気づき、考え、反省することが増えた。僕も、気を抜けば、こうなるのだという見本と、毎日をともにする。僕自身も、本物のおじいさんになったし。